君のスケッチ帖

いたいけな中年がマンガを描いたり本を読んだりするブログ。

スケッチ1枚

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 人物を描いていていちばん難しいのは、素で突っ立った人を真正面から、角度もパースもつけないシンプルな構図で捉えたポーズだと感じる。装飾的なごまかしがきかない分、描いている人のそのとき有している画力がじかに反映されるという怖さがあるように思う(構図やポーズ的にひねった絵っていうのは、時間をかけて頭をひねって考え、自分の身体をそれに同調させるように想像を働かせれば、遅かれ早かれいずれそれなりに見れるものになるとは思うんだけど、素立ちのポーズはそういう手順ではなかなかうまく現れてくれない)。
 折にふれてそういう素立ちのポーズをちょこちょこ描いてはみるんだけど、目も当てられない絵が出来上がってしまって、そのたびにガッカリしてしまう。画面の中でその人物が、その人物としてそこに立っているように立っておらず、紙の上の平面に貼りついた人型の平面が、紙の上に目を注ぐこちらを真下から覗き上げるような具合になってしまう場合がしばしばで、非常に気まずい思いをする。
 素立ちの絵を手際よく決めることのできる人っていうのは、一般的に言って、総合的な画力のある人なんじゃないかと思うんだけど、素立ちの絵の練習ばかりしていてもおそらく総合的な画力が上がるってことはないようにも思う。
 そんな意味で、素立ちの人物画とは、釣りの格言でいう、「フナに始まり、フナに終わる」のフナに相当するもののようにも思う。フナを上手に釣れるようになりたいもんだ。